2017年12月16日土曜日

ビンテージ資料から判明する当時の米国衣料産業の細部までの丁寧さと流行

   米国の40,50年代頃のビンテージ衣料に付いているタグをみると現在の物と手触りが異なり、柔らかくてつるつるした絹の様なすなわちシルキーな感触があります。それは当時大流行で頻繁に衣料に用いられたレーヨンやアセテート糸を使用していたからであり、光沢や肌触りに高級感がある生地とされていたサテンと同様の組織種類で織られていたという理由がありました。
   今回小社は新しい短靴用にタグ制作に取り組み、そしてやはり米国戦前戦中戦後黄金期の再現に取り組んでいるのであればそうであるべきだと思い当時と同様に前述の方法で製作して頂く事に致しました。しかしながら正確にいうとその生地製品名の素材はなかった為使用出来ませんでした。それでも発明した企業の特許名や多少の含有物または処理等の違いだけなのではないかと思うので、同種類の素材として存分に当時を踏襲していると思います。
   江戸から明治へ国体変革しその後日本の対外貿易を支えた絹の輸出。戦中はないにしろ戦後直後まで続いた最高級天然素材輸出も、技術革新により米国で一般化された新しい物が台頭する時。
以前の物に取って代わった物の流れに乗って繊維工業が盛んだった日本もその素材を生産しない訳はありません。また戦後あたりは〇〇レイヨンや◯レそして◯◯人造絹糸といった会社名が多数あったのもレーヨン系素材が爆発的な流行だった証拠だと推測致します。
   また当時の40,50年代のビンテージ衣料の大多数のタグは前述の素材でいくつかの織り方を採用していたと推測致します。また小社が所有する資料のうち、カスタム、テーラーメード的な商品やある程度高級感を帯びていたり独特なデザインやジャンルの製品にはシルキーなタグを採用していた様に思え、それであればという事でこちらのシルキーな方を採用致しました。
   またフォントはそのまま使用せず少し不自然に見える文字間の隙間等は排除致し、デザインや糸の色も当時のタグを参照しつつ米国仕様のインチ計測でサイズを調整作製して頂きました。最後の点は残念ながら配置部分によっては折り込まれてしまうかもしれませんのでご容赦頂きたく思います。
   また60年代以降に用いられてきたナイロン糸などと比べるとやはり耐久性がある程度劣り、擦れる部分等に配置されると摩耗も早くなると思います。

   しかしながら小社製品を選んで頂いた皆様には全く問題にはならない不都合な米国ビンテージの踏襲かと思います。それは最細部まで追求させて頂いた方が皆様にも一層魅力的な製品が出来たと思って頂けると思うからです。




レーヨン、アセテート系の糸で縦と横が規則的に交差した織り方と
推測するタグ刺繍文字
50sコットンコーディロイシャツ

50sウールシャツ

60sエンジニアブーツ

レーヨン、アセテート系の糸で縦と横が規則的に交差した織り方と推測するタグ
プリント文字
50sデニムシャツ

レーヨン、アセテート系の糸で光沢が出る織り方を用いられたと推測するタグ刺繍文字
50sレーヨン、アセテート系ハリウッドジャケット

50sレーヨン、アセテート系ハリウッドジャケット

60sウールカーコート

50sレーヨン系パンツ

50sウールロングコート

50sスエードシューズ


今回製作したクラフトライトタグ刺繍文字
室内灯ありフラッシュなしの撮影でもタグ表面の光沢が確認出来ます